大人の絵本の楽しみ方 前編

絵本は子どもだけの読み物ではありません。大人ももっと絵本を読むべきだと思います。

かつての私は、絵本は子どもが読む本だと思っていて、子どもがいなかった頃は全く興味がありませんでした。けれども子どもが生まれる5年ぐらい前に始めた英語の本の多読をきっかけに、徐々に絵本の魅力に取りつかれました。

今回は大人がハマる絵本や、大人が楽しめる絵本の読み方を、私の視点でまとめてみました。

絵から魅せられる

絵本なので、やはり絵から受ける印象は大きいです。絵本には興味がなかった私が、一番最初に惹かれたのが美しい絵、繊細な絵でした。たくさんある中から、特に好きな絵本を紹介します。

まどのそとの そのまたむこう Outside Over There

  

モーリス・センダック(Maurice Sendak)の絵本です。ページを開くと隅々まで細かく書かれた絵。実物かと思われるほど緻密に描かれた線。まずそういう絵に心を奪われました。ストーリーを次に紹介します。

お父さんが不在の間、姉は妹のことをちゃんと見ているように頼まれます。けれども姉が目を離した隙に、妹がゴブリンにさらわれてしまいます。姉は”Outsede Over There”へ妹を取り返しに行きます。そこは不思議な空間。どこかから聞こえてきたお父さんの声に励まされます。お父さんが不在の間の不安な気持ち、責任感、妹への複雑な気持ちなどが見事に表現されているように思います。

理屈でわかるのではなく、心でわかるような絵本でした。モーリス・センダックといえば、有名な本があります。『かいじゅうたちのいるところ』です。絵のタッチがかなり違って、こういうスケッチのような絵も描くのですね。

急行「北極号」 The Polar Express

  

作者はクリス・ヴァン・オールズバーグ(Chris Van Allsburg)です。とても美しい絵に、ファンタジーあふれる物語。大人もうっとりするような絵本です。

クリスマスイブの夜、窓の外をみると機関車が。家の前に止まっていたのです。乗り込むとパジャマを来た子どもたちがたくさん乗っていました。サンタの住む北極へ向かうのです。臨場感あふれるイラストに圧倒されて、絵本の世界に浸ります。ラストには子ども向けではなく大人向けの感動が待っています。コルデコット賞受賞作品です。

クリス・ヴァン・オールズバーグのその他の絵本で面白かったものを数冊、下に紹介します。

名前のない人 The Stranger

  

農夫が車でシカをはねてしまったと思い、車の外に出てみたら男が倒れていました。医師の見立てによると命に別状なしでしたが、記憶を失っているというのです。この男はいったい誰なのか?記憶を取り戻すまで、Bailey一家と暮らすことになりました。そのうちにすっかり家族に溶け込んだのですが・・・どこか変なのです。

ジュマンジ Jumanji

  

両親がお客さんを連れて帰るから家を汚さないようにと言って、出かけていきました。JudyとPeterは外に遊びに行き、細長い箱にJUMANJIと書かれたすごろくのようなゲームを見つけて家に持ち帰りました。どうせもうやり飽きてしまった類のゲームと同じと、高をくくってゲームを始めましたが、ふたりはゲームを始めてすぐ、その決まりの本当の怖さを知るのでした。

1999年6月29日 June 29, 1999

作者はデヴィッド・ウィーズナー(David Wiesner)です。何度かコールデコット賞も受賞している作家さんです。絵だけで文字が全く無い、または上記の絵本のように文字がある絵本もあります。

女の子が野菜を大気圏外で育てたら、大きく育つのではないかと仮説を立てて実験開始。空へ飛ばした野菜の種が日数を経て巨大に育ち、アメリカ各地に静かに降りてきた?!女の子の実験は成功したかのように思えたが・・・TVのニュースを見ていると、ひっかかることが。意外な結末が待っています。

デイヴィッド・ウィーズナーのその他の絵本で面白かったものを数冊、下に紹介します。

かようびのよる Tuesday

  

火曜日の夜、満月が昇り始めた頃に不思議な現象が。美しく繊細なイラストが、見開きいっぱいに不思議な世界を繰り広げます。ほとんど文字は無く、絵だけの絵本。きちんとストーリーがあり、読み手にもはっきりとそれが伝わってきます。終わり方にもワクワクさせられます。

3びきのぶたたち The Three Pigs

  

3匹の子ぶたの話かとおもいきや、度肝を抜く展開。1回目読んだときはいったいどういう話なのか、はっきりつかむことができないほどぶっ飛んだ内容でした。再び読んで、なるほどと落ち着いて笑えるストーリーでした。イラストが素晴らしいです。物語の2次元の世界とブタたちが迷い込んだ異次元の世界が上手く表現されています。

不気味、恐怖で魅せられる

大人が好きですね、不気味で怖い物語。苦手な人も勿論いますが、概して大人はメルヘンチックなお話よりもこっち系かと思います。

かくいう私もこの系統の絵本で、絵本好きがより深くなった気がします。私が始めにハマったのは、マザーグースでした。

マザーグース

マザーグースとは英米を中心に親しまれている英語の伝承童謡の総称をいいます。日本のわらべ歌に近いと思います。よく知られているのは『ロンドン橋落ちた(London Bridge)』や『きらきら星(Twinkle, twinkle, little star)』がありますね。

マザーグースは、それはもうたくさんの訳本が出ています。私は日本語訳しか知らなかったときは、何が面白いのかと思っていたのですが、英語を読むとまた違いました。韻を踏んだ音がリズミカルで面白かったり、英語表現が新鮮でした。

始めはそうやって聴いたり声に出して読んだりする楽しみ方だけでしたが、あるときマザーグースの謎に迫る和書を手にしました。それがきっかけで、マザーグースに魅せられてしまいました。興味深くて怖いマザーグースをひとつ紹介します。

<Ring-a-ring o’roses>
Ring-a-Ring-o’ Roses,
A pocket full of posies,
Atishoo! Atishoo!
We all fall down.
<ばらの花輪をつくろうよ>
ばらの花輪を つくろうよ
ポケットいっぱいの花束
はくしょん はくしょん
みんな倒れた

今では子ども達が輪になって遊ぶ歌ですが、実はこの歌には悲惨な過去が歌いこまれているという説があります。

「ばら」はペストの赤い発疹、「花束」はペストを防ぐための薬草、「はくしょん」(くしゃみ)はペストの末期症状、「みんな倒れた」は皆死んだことを歌いこんでいるという解釈です。
出典『もっと知りたい マザーグース』鳥山淳子著、世界の民謡・童謡

この他にも謎めいたものや、ゾッとするほど直接的で恐ろしいものもあります。現代訳が読みやすいので、谷川俊太郎訳がおすすめです。

セット・マザーグースのうた

セットではなく、1冊売りもあります。図書館にもあるかも!

エドワード・ゴーリー

エドワード・ゴーリーを論理的に語るのは私には難しいですので、ウィキペディアから引用させてもらいます。

絵本という体裁でありながら、道徳や倫理観を冷徹に押しやったナンセンスな、あるいは残酷で不条理に満ちた世界観と、徹底して韻を踏んだ言語表現で醸し出される深い寓意性、そしてごく細い線で執拗に描かれたモノクロームの質感のイラストにおける高い芸術性が、「大人のための絵本」として世界各国で熱心な称賛と支持を受けている。
ウィキペディア エドワード・ゴーリーより抜粋

子どもには絶対に見せたくない絵本です(笑)。残酷すぎて気分が悪くなってしまったこともあるのですが、なぜか好き。でもあまり頻繁には見たくないです。私にとってはそういう作品です。数冊、紹介します。日本語版には英語も載っているので、日本語版の表紙だけを載せました。

ギャシュリークラムのちびっ子たち The Gashlycrumb Tinies

Aから始まる名前の子からZで始まる名前の子までが、一人ずつ死んでいきます。何で死んだのか、そして死ぬ瞬間、死んだ後などが描かれています。ただそれだけの絵本です。

不幸な子供 The Hapless Child

恵まれた家庭で生まれ育った女の子は、両親から大切にされていました。ある日、お父さんがお仕事でアフリカへ単身で渡ることになりました。そして不幸にも、アフリカでお父さんが死んだという知らせが。お母さんは病に臥せり、そして死んでしまいました。そこからどんどんと不幸の坂を下り始める女の子。どこまでも落ちて行きます。ラストの惨さには涙が出ました。

長くなってしまったので、記事を二つに分けることにしました。続きは後編で!

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